釣りをしない人にも結構知られている、ピラルクというお魚。
私がアマゾンでピラルクを釣ってきた話をすると、高確率で「動物の森に出てくる!」と言われる。しかも、子供とかではなく、結構ご年配の方などにも。
動物の森はそれだけ国民に愛されているゲームなのか…おっと、話がいきなり脱線しそうになった。笑
私のピラルクに対しての印象は、「アマゾンの王者」や「淡水の王者」といったもので、小さい頃に魚図鑑で見た時の印象が今でも脳にこびりついている。
だって、川魚で3mにもなるんだよ!?これはまさに自然の神秘さと言わざるを得ないのではないだろうか。
そんな感じで、日本人に知られているピラルクですが、実は1種類ではなく複数種がいると近年の研究で示唆されている。
ピラルクの語源
そもそもピラルクという名前、実は英語ではなく南米先住民の言語であるトゥピ語が由来とされている。
魚を意味するpira(ピラ)と紅い植物を指すurucum(ウルク)という単語が繋がって、pirarucu(ピラルク)という名前がつけられたそうだ。
確かに、南米にはピライーバやピララーラ(レッドテールキャット)など、ピラと頭に名前がつく魚がいることを、熱帯魚好きなら知っているかもしれない。
そんなピラルクの属名はArapaimaといって、私が訪れたガイアナ共和国の漁師村の住民たちもピラルクとは呼ばずに、アラパイマと属名で読んでいた。
海外に釣りに行くようになって驚いたのは、意外なほど魚を呼ぶときに通称ではなく学名や属名で釣り人が呼んでいるということだ。
私は大学・大学院と魚類分類学を専攻していたので、学名が通じるというのは結構大きなメリットでもある。
ということで、実は動物の森や私たちが何気なく使っているピラルクという呼び名は、原住民の言葉ということを豆知識として覚えておいてね。
現在いるとされているピラルクの種類
ピラルクといえば、Arapaima gigas という種類を指すとされてきた。すなわち、ピラルクにはA. gigas 一種類しかいないとされていたのだ。
こういった1つの属の中に1種類しか種がいないものを「一属一種」と呼んだりする。
しかし、近年の研究により実はピラルクには複数の種類がいるという可能性が浮き彫りになってきたのである…!
「ピラルクの新種!」って言ったら、なんかテンションが上がるのは私だけ…?笑
現在、いる(可能性がある)とされているのは以下の5種である↓
A. gigas
A. arapaima
A. agassizii
A. leptosoma
A. mapae
ピラルクに5種類もいること、知ってたという人はどれくらいいたでしょうか?5種全部を言えた人はなかなかの魚マニア…いやいやピラルクマニアだと思う!
ただし、この分類に関する研究はまだまだ検討の余地があるとも個人的には感じている。この種類の中には、標本一個体しか知られていない種や、新種を発表する際に論文を記載するに当たって使った最も大事な標本がなくなってしまっているという種なども含まれているからだ。
そして、Arapaima属を研究している分類学者もそれほど多くはないようだが、Donald. J Stewartという研究者が近年論文を複数発表している。
ピラルクを釣りたい人のために
アマゾンの王者ピラルク、実は意外と個体数が多いというのも、最近ニュースで知った。そして実際に南米を旅してみると想像以上にピラルクの生息数は多いようだ。
一時期は個体数が激減したとされていたピラルクだが、保護活動の結果かなり資源量を回復したらしい。
私が釣りをしたガイアナの河川は、それほど大きい規模ではないのにも関わらず、流れが淀んだ淵のようなポイントには大小かなりの数のピラルクの呼吸を確認することができた。
また、その後に訪れたアマゾン川支流の河川でも大型のピラルクを確認できた。
なんとなく日本人の感覚からすると「大きな魚は個体数が少ない」と思うと思うのだが、それは流石のアマゾン、ピラルクほどの巨大魚がたくさん生息できるほどの包容力を持っているようだ。
もちろん、人間による保全活動が功を奏している部分も大きい。エリアによっては、レジャーフィッシングとしてのピラルク釣りも確立されており、キャッチアンドリリースもしっかりなされている。
私は行き当たりばったりでピラルク釣りにガイアナ共和国まで行ってしまったけれど、それでも釣ることができるくらいには(まあ、運が良かったというのもあるが)、ピラルクは釣れる魚である。
また、流石に南米まではいけないという人も、東南アジアの釣り堀でピラルクを釣ることができる場所もいくつかある。
さらに言えば、日本にもピラルクを釣らせてくれる釣り堀が実はあるのだ。
一生に一度でいいから、アマゾンの大魚を釣ってみたいという人は、それぞれの目的やスタイルに合わせてぜひ釣りにチャレンジしてみてほしい。
私は危険を冒してまでも地球の裏側にピラルクを釣りに行って本当に良かったと思っている。皆さんともぜひあの感動を共有できる日を楽しみに待っています!
